2020年8月21日金曜日

グローバルな地質学のためのオープンGISデータリンク集


日本など一部例外を除き、基本的にグローバルなデータか、グローバルにデータを保管しているリポジトリを挙げる。
他にこんなのあるよっていう人はぜひ@geoignまで教えてください。

更新履歴:
2020/08/20 とりあえずすぐ思いつくものを載せて公開→Bloggerのバグ?により全てリンク切れしてしまったので復旧中...(コメントでのご指摘ありがとうございます) 
2020/08/23 復旧完了。画像追加。誤字多数修正。

海底地形を含む全球標高データ

基本的に、陸域を衛星レーダーのデータ、海域を衛星の重力データで埋め、実際の船によるマルチビーム測深データを重ねて作られている。

  1. GEBCO - General Bathymetric Chart of the Oceans
    格子サイズ約500m。世界標準。とりあえず1つ持っておくならこれ。
    国際水路機関の下部組織によるデータ。パブリックドメインであるため、ライセンスを気にする必要がない(ただし出典を書いてねとも書いてある謎規約のため、できるだけ書こう)。
    右上のOther downloadからまとめて全世界分一括でダウンロードが可能。

    長らく定番だった2014年版はマルチビーム測深の範囲がGMRTやSRTM+系と比べて少なかったが、2019年に各国機関からのデータ寄付を受けて再リリースされ一気に追いついた。2020年8月現在は2020年版(GEBCO 2020 Grid)に更新されている。


  2. SRTM15+
    格子サイズ約500m。衛星標高データで知られるSandwell&Smithらのデータ。
    陸域はSRTMに極域DEMが合成され、海域は彼らお手製の衛星データに世界中からかき集めたオープンな地形データが継ぎはぎされている。
    解像感高めのチューニングのためかノイズも目立ち、解釈には注意を要する。

    JAMSTEC由来のデータが多く取り込まれているため、日本付近での精度を重視するなら最適解。引用は必須だがもう一つ持っておくならこれ。


  3. GMRT - Global Multi-Resolution Topography Data Synthesis
    格子サイズ61m。地球物理の海洋分野で老舗のコロンビア大LDEOによる、GEBCO(海洋)とSRTM(陸上)をベースに、世界中からオープンな地形データをかき集めて頻繁にアップデートされているデータ。
    可変解像度になっており、必要な場所を切り出して使うスタイル。場所によってはベストに近い解像度を得られる。

    地球科学データ閲覧ソフトのGeoMapAppに採用されており、マルチビーム測深の元データへのアクセスもGeoMapAppから簡単に行うことができる。生データへの踏み台としても便利。


陸域のみの全球標高データ

基本的に建物や植生込みのDSMであり、DEMでないことに注意が必要。
特にAW3D30は高精度なため、町並みや森林保護区まで「見えて」しまう。

  1. AW3D30 - ALOS World 3d 30m (Login)
    だいち1号による地形データ。とりあえず地形がほしいならこれが決定版。
    ASTER-GDEMより格子サイズは大きいが、こちらの方がずっと優れている。
    JAXAのクレジットが必要。


  2. SRTM - Shuttle Radar Topography Mission
    よく枯れているとされる。標高の絶対値が正確なため、分析対象としてもベスト。
    公式非公式含め、色々なバージョン・派生版がある。公式の最新はバージョン4。
    高緯度域のデータがないのが致命的な欠点。
    非商用に限られているが、今はCIAT SRTMを使うのが良さそう。元データはパブリックドメイン。

各種標高データリポジトリ

  1. GeoMapApp
    有名な神ソフト。地図上に様々な固体地球科学系データを表示してくれ、必要であればDLのために簡単にリポジトリのウェブページへ飛ばしてくれる。
    地図としては標準がGMRT、オプションでASTERが利用可能。
    色やシンボルのカスタマイズ性が低いのが欠点。

  2. US Interagency Elevation Inventory
    アメリカの各省庁の陸海地形データを横断検索できる。アメリカの研究者が関わった日本の船の航海も一部含まれているため、NOAA Bathymetric Data ViewerUSGS Earth Explorer の上位互換と思われる。
    未処理の生データが落ちてくることが多いことに留意。

  3. OpenTopography
    主にアメリカNSF予算で撮られたLiDARデータが保管されているリポジトリ。
    サーバー側で処理をかけることができ多機能。

  4. JAMSTEC Data Search Portal
    JAMSTECの航海のデータ検索ポータル。
    日本近海の登録データ数は圧倒的だが、地形はオープンでない事がある。また生ではなく自動処理済みデータで、処理過剰により歯抜けなことが多い。

  5. 自治体リポジトリ・その他の国家機関リポジトリ
    論旨から外れるが、たくさんある。以下は自分がよくアクセスするもの。
    日本: 兵庫県, 静岡県
    アメリカ: Hawaii, Oregon, Idaho, Washington
    ニュージーランド: LINZ(NZ地理院)

  6. 国土地理院 基盤地図情報ダウンロードサービス
    信頼の国土地理院の地形データ。国内で陸上のデータだと大抵これが一番。
    海底地形はない。測量法に基づく申請が必要な場合があり安易に使いにくい。

  7. Marine Geoscience Data System (MGDS)
    標高ではないが、世界中の数多くの地震波探査を始めとした海洋地質データにアクセス可能。

地理情報

  1. A Global Self-consistent, Hierarchical, High-resolution Geography Database (GSHHG)
    世界の海岸線ベクトルデータ。白地図作成の友。GMTではほぼ必須。
    昔からの定番だが、GSHHSと呼ばれていたこともあった。
    細かさにより区分があり、f(fine)が最高解像度。基本はこれを使えば良い。
    日本付近では微かにずれている(修正されていなければ)ので、陸域でクリッピングする等の際は念頭に。


  2. GEBCO undersea feature name
    国際的に承認された海底地形の名称(英語)。国連下部組織なので権威がある。
    研究業界における呼び名と合わないことが多々あるのはご愛嬌。


  3. 国土数値情報
    日本国内の河川・行政区などの主にベクトルデータ。
    こちらは基盤地図情報と異なり基本的に出典の明示で利用可能


  4. Hydrosheds
    WWFによる、河川・湖などのベクトルデータ。
    同用途で使われていたGLWDの後継とみなして良さそう。


地質情報

沢山あるが、国ごとに管理されていることが殆ど。以下は主に自分用。
  1. 日本
    産総研 20万分の1シームレス地質図 (WEBShapefile)
    地質図navi (地図文献閲覧)


  2. オーストラリア
    Geoscience Australia Interactive Maps

海洋底・海台

  1. Earthbyteグループによる海洋底年代
    Muller et al. (2019), Seton et al (in press)などが最新か。
    いずれもnetCDFラスタデータ。


  2. McLeod et al (2017)
    OA論文。サプリメントに活動を停止した海洋底拡大軸のshapefileがある。
    確かに拡大軸と思われるTier1、怪しさがあるTier2、判定保留の3カテゴリに分けられている。


  3. Whittaker et al. (2015)
    世界各地のLIPsのshapefileが含まれている


  4. Sandwell et al. (2014)
    海洋底重力モデル(netCDF)

  5. Seton et al. (2014)
    地磁気の縞模様の認定箇所データベース(shapefile)

プレート境界・スラブ

  1. PLATES (テキサス大学)
    最も定番のプレート境界データ。ちょっとざっくりしている。
    USGSのKML版はこれを少し改変してあるようだ。
    沖縄トラフが拡大軸になっているのが問題。


  2. Bird (2003)
    非常に細かいプレート境界。
    リンク先は有志によりshapefileなどに加工されたもの。
    こちらも沖縄トラフが拡大軸になっているのが問題。


  3. Slab2 - A Comprehensive Subduction Zone Geometry Model
    沈み込むスラブの深度。ラスタ形式。

  4. テクトニック境界 簡易リスト v1.0 
    日本語のプレート境界データがないので池上が自作したもの。
    陸域・横ずれは超有名なものだけ。将来の更新の予定あり。
    活動が終わった拡大軸(extinct)は追記中であり網羅していない。
    CC-BYライセンス。GeoPkg形式。


地震・メカニズム解

  1. ComCatカタログ
    earthquake.usgs.govで公開されている震源カタログ。
    直近の日本以外の地震はここを探すことが多い。

  2. Hinet自動処理震源 & 気象庁一元化震源
    日本周辺1998年以降の震源カタログ。要ユーザー登録。
    Hinetは直近2日、気象庁はそれ以前までのデータがある。
    Hinetは2019年頃から海域震源が含まれなくなったため意義が微妙に。

  3. ISC Bulletin
    国際地震センターの震源カタログ。
    世界の地震について長期的な解析をするにはこちら。


  4. Global CMT Catalog
    震源のメカニズム解(ビーチボール)のカタログ。
    応力場などを知る際に便利。でもGeoMapAppでプロットしたほうが便利かも。


火山

  1. スミソニアン博物館 VoTW 完新世火山リスト
    完新世に活動が認定された火山のリスト。Web経由のWFSサービスもあり。
    このほか噴火リストもある。近年のものはほぼ完全に網羅されている。


  2. InterRidge Vent Database
    海底熱水孔とその活動痕跡のデーターベース。
    実質的に海底火山のそれでもある。


2018年1月19日金曜日

海底火山ハブレの2012年噴火

※英語でしかプレスリリースが出ていない為に、伝言ゲームを経た奇妙な表現が多い日本語記事が出ているようです。関係者として居心地が悪いので、個人の責任でこの一般向け紹介記事を公開します。


海底火山ハブレの2012年噴火

2012年7月18日、南太平洋の海底火山ハブレ火山("Havre"; アーブルとも読む)で人知れず始まった流紋岩質マグマの噴火は、僅か22時間以内に1.2立方kmの軽石を噴出する大規模な噴火であった。これは例えば富士山宝永噴火(1707年)や桜島大正噴火(1914年)のほぼ2倍であり、陸上ではプリニー式噴火と呼ばれている爆発的噴火と同等規模・噴出率の噴火が深海底においても実際に起こるという初めての観測例である。
ハブレ火山は、NZから北に伸びるケルマデック弧に位置する。最も近い陸地は無人のル・アーブル岩礁(L'Havre rock)で、Havreの名前の由来となった。

2017年3月16日木曜日

ハワイ島 キラウェア・カルデラの鳥瞰図

BlenderGISの練習を兼ねて、キラウェア・カルデラの鳥瞰図を作成した。巡見のお供にどうぞ。

2017年2月27日月曜日

2016年11月29日火曜日

NZ・カイコウラ地震(2016) 画像まとめ

ニュージーランド南島北部の太平洋岸で2016/11/14に起きたカイコウラ*地震(Kaikoura Earthquake Mw=7.8)について。来月行く予定なのでその為のまとめ。
*カイコウラ=カイクラ=Kaikoura


地震諸元

USGSの第一報。その後M7.8に更新された。


2016年11月22日火曜日

パホイホイ溶岩とアア溶岩の違いが生まれる理由について(動画あり)

玄武岩質溶岩に特徴的な「パホイホイ溶岩」と「アア溶岩」の違いが生まれるプロセスについて、日本語で手頃な資料がなかったので作成してみた。



2016年11月11日金曜日

学生の自費フィールドワーク文化は何が問題か?


発端


自費フィールドワーク文化とは何か?

  • 野外調査や学会参加など教員なら研究費として処理するようなコストを、カリキュラムで課された活動の一部であるにもかかわらず自費で補填する文化。
  • 何十年も前から続いてきた伝統的文化。現在の教員たちもそうやって育ってきた。
  • 基盤経費が減らされているので、教員も使える金が無い(当事者でないのでよく知らない)

(11/13追記) 反響ツイートがあったので、Twitterのモーメント(まとめ機能)でまとめました。当事者の経験、安く抑えるコツ、教員側の努力など。