2015年11月27日金曜日

最近お気に入りの文献管理: Feedly + Paperpile


文献管理は院生以上なら恐らく誰しも悩むところで、自分もこれまで色々な方法やソフトを試してきては、色々と不満があって結局 「ファイル名をつけて保存」→フォルダ分けして管理 に舞い戻っていた。ところが最近割りと納得行くサービスを見つけられた気がするので、これはぜひ布教したいと思ってこの記事を書いた次第である。その名は Paperpile である。

Paperpileについて説明する前に、折角なので文献管理と切っても切り離せない、その前段階の新着論文探しに必須な Feedly についてもまず紹介しておく。



Feedly

多くのブログや学術ジャーナル、或いはプレスリリースには、Webサイトの更新情報を通知するフィード機能(RSS/Atom)が備わっていることが多い。Feedlyはそのようなフィードを管理するサービスの一つである。(そして2013年に最大手Google Readerが突然廃止され巻き起こったパニックの末、自分含め多くの難民が辿り着いた先である)
  
ブラウザ上でのFeedly操作画面
ブログやジャーナルのアドレスを入力して登録しておくと、図のような感じで新着を一覧情報として見ることができる。論文の場合要旨まで読めるようにしてあるジャーナルが多いので、ざっと眺めてダウンロードすべきか判断できる。タイトルをクリックすると、お馴染みのジャーナルのサイトに飛ぶことになる。

終身Pro会員が言うのも何なのだが、新着論文のチェックだけが目的ならばPro(有料会員)になる必要性は薄いかもしれない。最大の利点はおそらく、フィードのタイトルだけでなく文章(例えば要旨)も検索できるようになるという点ぐらいである。

Android端末上で、GReaderを使ってFeedlyを閲覧している様子(左→右)
Feedlyに蓄積されたフィードは、携帯端末でも読むことができる。Feedly自身もAppを配信しているが、Androidを使っている自分は操作感と視認性に優れたGReader Proを贔屓にしている。

これにより、
①待ち時間やトイレで携帯端末から新着論文をざっとチェックし、
②興味を持ったものを"Saved for later"にして、
③大学でPCからFeedlyを開きダウンロードする
というスムーズなプロセスが可能になるのである :)


Paperpile

https://paperpile.com/
本題のPaperpileに移る。これはいわゆる文献管理ソフトの一種で、文献のPDFファイルをデーターベース化して検索性を高め、執筆時には書式のフォーマットをしてくれるなどの一般的な機能をもっている。

しかしPaperpileの最大の特徴は、全ての機能がGoogleのプラットフォーム上に構築されているという点につきる。即ち、文献は全てGoogle Driveに保存され、閲覧と検索はGoogle Chromeの拡張機能で行い、執筆支援はGoogle Docsで実現されている。

Paperpileのメイン画面。タグ付けでの整理や全文検索が可能。

これまでこの文献管理ソフト界隈には、Endnote (Thomson Reuters), Mendelay (Elsevier), そしてReadCube (Nature/Wiley系)などの選択肢が存在してきた。Endnoteはソフトウェアそのものが高額であるし、Mendelayは文献を独自のコストパフォーマンスの悪いクラウドに保存させるという点で魅力に乏しいものだった。Readcubeは無料かつ好きなクラウドと組み合わせることが出来るので良かったが、Adobe Airで作られているためあまりレスポンスが良くなく、論文内にはメモを書き込まない自分の使い方には無駄が多かった。
ボタンを押すだけで、PDFが自動的にGoogle Driveに保存される。
Paperpileは他のソフトと違い、全てがブラウザ内で完結するように作られている。そのため、ジャーナルのサイトを開いてボタンを押すだけで保存が完了する。つまり、先述のFeedlyで"Saved for later"にしておいた論文を片っ端からブラウザのタブで開いておいて、このボタンをクリックするだけである (この辺は拡張機能を使ったMendelayと同じかもしれないが)。
Paperpileで取り込まれた文献をGoogle Driveで覗いてみたところ。
適切なファイル名が与えられて保存されているのが分かる。
Google Docsとの連携では、Doc中からキーワード検索を行うことで引用を挿入することができる。また引用テキストから逆にPaperpile内の論文ファイルを開くことができるので、下図のように複数の論文を引きつつまとめノートを作成するという事が非常に捗るようになった。他にも、一通り文中の引用を挿入し終わったあとにPaperpileのフォーマットツールを実行することで、文末にフォーマルな引用が自動的に追加されたりするなどの支援機能がある。
キーワード検索結果の一覧から引用を挿入する。
フォーマットツールを実行すると、文中に挿入した全ての文献の一覧が末尾に追加される。


ノート作成イメージ(左: PDF, 右: Google Docs)。ノート中の引用箇所から逆にPDFを開くことができる。
図中の論文は Carey et al. (2014) [CC-BY]。
Paperpileの解説ビデオ。その他主な機能についてはFeaturesを参照。
最近は論文などの共同編集でGoogle Docsが使われるシーンが多い感じであるので、そのプラットフォーム上に構築されているのは大きな強みだとと感じた。Feedlyと違い無料では30日間しか使うことができないが、月$3という価格Mendeleyの最安プランよりも安く、良心的な範囲だと思う。

Paperpileの悪い点は、やはりGoogleべったりなところか。Chrome以外のブラウザーでは開くことさえできない。またPDFに直接書き込んでノートを取りたいという人にも、現行は向いていないように見える。またこれは全ての文献管理ソフトに共通することだが、Web上の検索エンジンから文献情報を取ってくるので、(日本語の)ローカルな論文や海外でも古い論文については為す術がない
(2016/02/12追記: 国内誌の場合、CiNiiJ-STAGEのURLさえあれば、それをEdit→URLsへ手動で追加してAuto-Updateをかければ万事解決するようになったようだ。ただし大抵日本語タイトルで追加される。)



まとめ

・現行の流れ:
① GReader @Android端末
→ Feedlyに溜まったフィードから、面白そうな新着論文を"Saved for later"にする
② Google Chrome @PC
→ 大学からFeedlyにアクセスし、"Saved for later"の論文のページにアクセスしてPaperpileに保存していく
③ Google Chrome @PC
→ 論文を開いて、Google Docsで引用しながらノートを書く

・新着論文のチェックから文献管理・執筆まで全てクラウドで完結するようになった。複数のPCで共通の環境を用意できるのでは良い。

・Googleのプラットフォームはやはり快適かつ偉大で、依存度が更に高まってしまった。

・環境を整えれば整えるほど、やっぱり人間側がボトルネックですね…

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